2022.01.17
理学療法学科教員ブログ(森)
ある患者様の笑顔が忘れられずにいます。
Mさんはとても素敵な女性で、こんなふうに歳を重ねられたらいいなと思うような方でした。末期がんで、初めてお会いした時は起き上がることができない状態でしたが、しばらくして全身状態が落ち着き、一時帰宅の話がもち上がりました。その頃は、体力も脚の筋力も落ちていて、立ち上がるのに介助が必要でした。
ある日、先輩に相談しました。先輩がMさんの手を前にあった椅子の手すりに置き、「はい立ってみて」と言うと、Mさんは介助なしで簡単に立ち上がることができたのです。私も同じようにやっていたつもりでしたが、ちょっとした手の位置の違いで、大きな差がありました。独りで立ち上がれたとき、Mさんはとても喜んで、キラキラの笑顔を見せてくださいました。「これで家に帰った時にトイレに行ける!娘にオムツの世話をさせずに済むわ!」と。きっとずっと、家には帰りたいけど、あまり動けないから娘さんに迷惑をかけてしまう、申し訳ないと思っていらっしゃったんだと思います。とても優しい方でした。その笑顔を見て、理学療法士ってこんなふうに効果を出して、患者さんを笑顔にすることができるんだなと感動しました。嬉しくて、誇らしくて、そして自分の未熟さが情けなくって、泣きそうになったのを覚えています。
またいつか、あんな笑顔を見ることができるように、そして学生さんにも見てもらえるように、理学療法士として、大学教員として、研鑽を積んでいきたいと思います。
写真は、病院での忘年会の準備にはしゃぐ私と、大学に架かった虹です。
理学療法学科 森 彩子