2021.04.02

お知らせ

令和3年度入学式 学長式辞

学長の式辞を申し上げるに当たり、私が、理事長と学長を兼務いたしておりますので、理事長としてのご挨拶は、割愛させていただきますことをお許しいただきたく存じます。

また、今回、新型コロナウィルスの拡大に伴う影響により、慎重に協議を行った結果、安全に配慮し、式典にご来賓及びご家族の皆様のご参加をご遠慮いただくことにいたしました。

このような形になりましたが、今日まで新入生の皆さんを慈しみ育てたご家族にお慶びを申し上げるとともに、本学の教育研究にご理解とご協力をいただいている関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。
皆さんも、ご家族や、皆さんを応援してくださっている方々に改めて感謝を伝えていただきたいと思います。
特に、昨年度は新型コロナウィルスの感染拡大に伴う休校措置などで、受験生であった皆さんは不安なことが多かったと思います。同様に、皆さんを支えてくださったご家族のご苦労も大変なものであったと思います。不安や苦労を乗り越え、今日を迎えられた皆さんとご家族の皆様に重ねてお祝いを申し上げます。

本日の入学式の様子は、ビデオカメラで撮影し、YouTubeでライブ配信しています。今日、この席にご参加いただけなかったご家族や関係者の方からの要望に応え、このような取り組みを行っていることをお知らせします。

さて、新入生のみなさん。本日は、ご入学、まことに、おめでとうございます。
列席の教職員と共に162名の新入生の皆さんの入学を、心から歓迎します。

皆さんは、理学療法学士、柔道整復師、鍼灸師のそれぞれの資格取得を目指し、各学科で学ぶ専門的分野に違いはありますが、全員が社会に貢献できる医療人となるべく、本日、こうして入学されてきたことと思います。

今、医療の現場は、どんどん変化しています。本学での4年間を通じ、最新の知識を習得し、技術を磨き、卒業後、臨床の現場で、尊敬され慕われる人間に成長できるよう、努力を積み重ねてくれることを期待しています。
また、大学では、自ら学び、探求する姿勢が求められます。
大学では、学年やクラスごとの時間割は配られず、自分自身で履修登録を行わなければなりません。また、授業は、シラバスという授業の内容や進め方、成績評価の方法を記載した計画書に沿っておこなわれます。
教員は職員室ではなく、各研究室におり、質問や相談に応じるため、オフィスアワーを定めています。
このように、これまで皆さんが経験した学校生活とは大きく異なる点があります。
また、これからはインターネットを活用した遠隔授業が一層強化・推進されると予想されており、本学においても新しい学びのかたちの模索を進めています。
最初は戸惑われることがあると思いますが、分からないことは、自分から調べ、聞いてみましょう。教職員は皆さんの質問に応える準備を整えています。

さて、入学生の皆さん、新型コロナウィルスの感染拡大にともなって、話題となった本がいくつもありました。その中にフランスのノーベル文学賞受賞作家であるアルベール・カミュによる「ペスト」があります。
感染症によって封鎖された都市という極限状態で、人間はどのように考え、行動するのか、感染症の流行という不条理に対してどのように対応するべきかを問いかける本書の内容が、まさに現在の新型コロナウィルスによるロックダウンの状況と重なり、話題となりました。
この作品は、発表当時、戦争の記憶が生々しかったことからその経験と重なって、強烈な共感を持って民衆に受け入れられました。今回は感染症の流行と都市の封鎖、という点に共通点を見いだし、そこから普遍的な考えを得ようとしたと言えます。
この作品で、「ペストと闘う唯一の方法は誠実さだ」と主人公のリウーは語りました。「自分の職務を果たすことだ」とも。
職務への誠実さを考えるとき、主人公のリウーが医師であることもあって、新型コロナウィルスの感染拡大の中で懸命の努力を続けられる医療職のことを考えずにはいられません。感染終息の目処がつかない状況で、自らの安全と医療職としての責任のギリギリのバランスを取りながら職務を全うしている医療職は、まさに新型コロナウィルスと戦う唯一の方法である誠実さを以て今も職務に当たっておられます。
皆さんも、こうした医療職の仲間となるべく、これから4年間学ばれます。
単に知識と技術を学ぶだけではなく、人間としての誠実さも、授業や実習を通して身につけて頂きたいと願います。

皆さんが過ごす学生生活の4年間は、これからの皆さんの人生においては、ごく短い期間です。
どうか、社会に、学問に、友人に、家族に、そして今掲げている自分自身の初心に対して誠実であってください。
私たち学園の教職員も、大学設立の際の初心を忘れず、皆さんと共に、よりよい大学を創り上げたいと考えております。
一緒に、宝塚医療大学の歴史を作っていきましょう。われわれが全力で応援し、サポートいたします。

最後に、新入生の皆さんがそれぞれの夢を叶えられ、人間として成長されることを祈念して、私の式辞といたします。

令和3年4月1日
宝塚医療大学 学長 岸野雅方