日常的な運動が慢性痛を緩和することは知られていますが、どのようなしくみにより痛みが和らぐのかは、ほとんど分かっていません。
和歌山県立医科大学付属病院にPTとして勤務する南晃平先生と本学の上勝也教授らの研究グループは、慢性痛を発症しているマウスに自発運動を行わせると痛みが和らぐとともに、脳の海馬という部分の神経活動が減弱することを明らかにしました。
海馬は不快感や恐怖感などの情動をコントロールする脳領域なので、この結果は痛みがあると湧き上がる様々な好ましくない情動(不快感や恐怖感など)を運動が打ち消すことにより慢性痛が和らぐという興味深い結論を導きました。
今回紹介した論文は、Springer Natureが刊行する科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されています。「痛み、情動、運動」に興味のある方は(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36788313/)に是非アクセスしてみてください。
【原著論文】
筆者名:Kohei Minami、Katsuya Kami、Yukihide Nishimura、Makoto Kawanishi、Kyosuke Imashiro、Takuma Kami、Shogo Habata、Emiko Senba、Yasunori Umemoto、Fumihiro Tajima
南晃平、上勝也、西村行秀、川西誠、今城恭祐、上拓馬、羽端章悟、仙波恵美子、梅本安則、田島文博
筆者区分:Corresponding author: Katsuya Kami
タイトル:Voluntary running-induced activation of ventral hippocampal GABAergic interneurons contributes to exercise-induced hypoalgesia in neuropathic pain model mice
「腹側海馬GABA作動性介在ニューロンの自発運動による活性化は神経障害性疼痛モデルマウスの運動で起こる疼痛緩和に関与する」
雑誌名:Scientific Reports
巻号:13(1):2645. doi: 10.1038/s41598-023-29849-6.
発行日:2023年2月14日
URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36788313/